口が開けづらい・あごのカクカク音はなぜ起こる?鍼灸で改善できる理由

執筆者:鍼灸師 赤岩優子
顎のカクカク音や口の開けづらさでお困りの方はぜひ鍼をお試しください

「口を開けづらい」「あごがカクカク鳴る」そんな症状はありませんか?これは、顎関節の内部で起きている“関節円盤障害”かもしれません。顎関節症の中でも、関節円盤障害は顎関節内の関節円盤とよばれる“クッション”がズレてしまう状態です。そのままにしておくと、関節の摩耗や変形につながることもあります。
このページでは、口が開けにくい(開口障害)や、あごが鳴る(クリック音)といった症状の原因、そして当院が行っている鍼灸によるアプローチについて、鍼灸師の視点からわかりやすくご紹介します。
開口障害とクリック音の正体
開口障害とは、口を開けるときに「あごが引っかかるような感覚」や「痛み」を感じることによって、スムーズに口を開けられなくなる状態のことです。日常の食事や会話にも支障をきたすことがあります。
一方、クリック音とは、あごを動かした際に「カクッ」「コキン」といった音が鳴る現象で、関節円盤(かんせつえんばん)がずれた状態で関節が動くことによって生じます。この音が気になり、不快感や不安を覚える方も少なくありません。
これらの症状の背景には、咀嚼筋群(そしゃくきんぐん)という「ものを噛む際に働く筋肉」の過度な緊張や筋バランスの乱れが関係していることが多くあります。
こうした筋肉のアンバランスが、開口障害やクリック音といった症状を引き起こすのです。
関節円盤とは
関節円盤(かんせつえんばん)とは、あごの関節(顎関節)の中にある、クッションのような役割をもつ軟らかい組織です。
側頭骨と下あごの骨(下顎骨)の間にあり、あごをスムーズに動かすための“滑りやすい土台”のような働きをしています。
この円盤が正しい位置にあることで、口を開けたり閉じたりする時に、骨同士が直接ぶつからず、衝撃を吸収しながら動きが安定します。
しかし、筋肉の緊張や関節の不調があると、この円盤の位置がずれてしまうことがあり、その結果、あごの動きが引っかかったり、「カクン」と音が鳴ったり、痛みが出ることがあります。
顎関節症に鍼灸治療が効果的な理由とは?
顎関節症による「クリック音」や「開口障害」に対して、鍼灸治療が効果的とされる理由のひとつは、深部の咀嚼筋(そしゃくきん)に直接アプローチできる点にあります。
これらの症状には、関節円盤(かんせつえんばん)の位置異常が関係しています。関節円盤の動きを左右する筋肉は、顔の深い部分に位置しているため、一般的なマッサージでは十分に届きません。
特に重要なのが、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)です。
この筋肉は関節円盤の前方に付着しており、過度に緊張すると円盤を前方へ引っ張ってしまい、円盤の偏位(ずれ)が生じやすくなります。
これが「カクッ」という音や口が開きにくくなる原因のひとつです。
鍼灸では、このような深層筋の緊張を的確に緩めることができるため、顎関節の機能改善に役立ちます。
当院の専門的アプローチ方法
当院では、顎関節症に伴う開口障害、クリック音、あごの痛みなどの症状に対して、お一人おひとりの症状や筋肉の状態に合わせた鍼灸治療を提供しています。
以下が主な施術内容です。
咀嚼筋群への鍼と鍼通電
顎関節症に深く関わる咀嚼筋群(咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)や下顎の運動に関わる顎二腹筋・顎舌骨筋などに鍼をし、状態に応じて軽めの鍼通電(低周波電気刺激)を加えます。
特に、関節円盤の前方偏位が疑われるケースでは、関連する筋肉への直接的なアプローチが不可欠です。筋緊張を緩和することで、関節周囲の動きが改善し、痛みや開口障害の軽減につながります。
首・肩・背中への鍼治療による姿勢改善
猫背や前傾姿勢は、顎関節への負担を増加させます。
当院では、首・肩・背中の筋肉バランスを整えるため、広背筋・僧帽筋・肩甲挙筋などにも鍼治療を行います。
姿勢が整うことで、咀嚼筋群への過剰な負荷が軽減され、顎関節症の根本改善につながります。
自律神経とストレスの緩和にツボ刺激と経絡調整
顎関節症にはストレスや精神的緊張も大きく関わっています。自律神経が乱れると、筋緊張が持続し、痛みを感じやすくなります。その結果、症状の慢性化につながります。
当院では、内関(ないかん)・神門(しんもん)・太衝(たいしょう)といったツボや経絡への鍼刺激により、気の巡りを整え、ストレスによる影響を和らげる施術を行っています。
痛みの悪循環を断ち切ることで、症状の改善に向けて前向きになれることが大切だと考えています。
胸鎖乳突筋のアプローチによる頭部バランスと呼吸の調整
姿勢改善には、頭の位置も重要です。特に、胸鎖乳突筋への施術により、頭の位置を正し、同時に精神的な緊張感による呼吸の乱れを整えます。
この筋肉をマッサージにより丁寧にゆるめていくことで、副交感神経が優位となり、筋緊張の緩和や高いリラクゼーションがあります。
まとめ:あごの不調は、深層の筋肉と心身のバランスから整える
「口が開けづらい」「あごが鳴る」といった顎関節症の症状は、単なる関節の問題ではなく、深部の咀嚼筋の緊張や姿勢、ストレスなど複合的な要因が関係しています。
とくに関節円盤の位置異常は、放置すると関節の摩耗や慢性的な痛みにつながることもあるため、早めのケアが大切です。
当院の鍼灸治療では、こうした深層筋への的確なアプローチに加え、姿勢の調整や自律神経のバランス改善にも働きかけることができます。
症状の背景にある筋肉の状態や心身の緊張を診ながら、お一人おひとりに合わせた丁寧な施術を行っています。
もし、あごの違和感や開けづらさにお悩みでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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