ブログ

blog
公開日: 最終更新日:

原因不明の耳の痛み…実は“かみしめ”が原因?鍼灸で変わるその違和感

赤岩優子の写真

執筆者:鍼灸師 赤岩優子

耳の痛みや違和感でお困りの方はぜひご覧ください!

原因不明の耳の痛み…実は“かみしめ”が原因?鍼灸で変わるその違和感

「耳の奥がズーンと痛む」「耳の周りに違和感を感じる」そんな“原因不明の不調”に悩まされていませんか?
実はその違和感、歯の「かみしめ」が引き起こしているかもしれません。
本記事では、耳鼻科でも歯科でも解決できなかった不調が、鍼灸によって改善に向かった一例をご紹介しながら、筋肉のコリがもたらす意外な不調と、それに対する当院のアプローチをお伝えします。
日々のストレスや無意識の緊張が、耳・顎・首へと“連鎖的”に影響しているかもしれない——そんな気づきが、あなたの不調の解決のヒントになるかもしれません。

原因不明の耳の違和感—その正体は「かみしめ」かも?

かみしめやあごのの悩み

当院を訪れた40代の女性の症状です。

「耳の奥がズーンと痛む感じがして、違和感もずっと続くんです。耳鼻科にも行ったし、歯科でも歯に原因はないと言われてました。でも症状が続いているんです…。」

そう言いながら、何の病気かわからないことに、たいへん困っている様子でした。

実はこのように、さまざまな科を受診しても原因がわからず、長い間不調に悩まされている方は少なくありません。

耳鼻科でも歯科でも解決しない…“耳の奥の痛み”の真実

側頭筋と咬筋の位置

問診と触診を続ける中で、私はこの方の咬筋(こうきん)が異常に緊張していることに気づきました。

会話の端々から、日常生活の中でのストレスや「無意識のかみしめ」があることもわかってきます。

実は、咬筋が硬くなることで顎関節周囲や耳管(じかん)を圧迫し、耳の奥の痛みや違和感を引き起こすことがあります。

耳鼻科的には異常がなくても、「筋肉由来」の耳の不調という見落とされがちな原因が潜んでいます。

口を開けるのが痛い・顎の関節が鳴る…といった顎関節症にみられる代表的な症状がない場合でも、実は顎関節や咬筋などに負担がかかっているケースも多くあります。

筋肉はつながっている—耳・顎・首に広がる“コリの連鎖”

咬筋のような噛むための筋肉は、単体で働いているわけではありません。

たとえば、側頭部に広がる側頭筋はこめかみにある咀嚼筋のひとつで、無意識のかみしめによって緊張しやすい部位です。

また、耳の後ろから鎖骨にかけて走る胸鎖乳突筋は、姿勢や呼吸とも関係する重要な筋肉です。この筋肉がこわばると顎周囲や耳の奥・目の周りの感覚に影響を与えることもあります。

さらに、顎二腹筋(がくにふくきん)や顎舌骨筋(がくぜっこつきん)など、顎の下や喉のあたりにある筋肉群は、嚥下や話す動作にも関係し、咬筋の緊張と連動して固くなりやすい場所です。

こうした筋肉たちは、知らず知らずのうちに連鎖的に緊張していきます。その結果、
「耳が詰まったような違和感」「耳の奥がズーンと響くような痛み」といった一見原因がわかりにくい症状が現れてくるのです。

このような“筋肉由来の不調”はレントゲンや血液検査では異常が映らず、「どこにも異常がないのに、つらい」という状態になりがちです。

でも、だからこそ身体の声に目を向けて、筋肉のコリや緊張がどこから始まり、どこへ影響しているのかを丁寧にたどることが、とても大切になってきます。

鍼灸だからできる、筋肉と自律神経への多面的アプローチ

当院では、耳の奥の痛みや違和感の根本にある“筋肉の緊張”に対し、以下のような多面的アプローチで鍼灸治療を行っています。

かみしめ筋に鍼

咬筋・顎関節まわり・咀嚼に関わる筋肉への鍼施術

まず重点的にアプローチするのが、「かみしめ」の主役ともいえる咬筋やその周囲の筋肉です。

顎関節や側頭筋、顎下部の筋肉(顎二腹筋・顎舌骨筋など)にピンポイントで鍼を打つことで、緊張をゆるめ血流を促進し、耳まわりの圧迫感の軽減につなげていきます。

胸鎖乳突筋・斜角筋・肩の筋肉への調整

耳の後ろから鎖骨にかけて広がる胸鎖乳突筋や斜角筋、肩の僧帽筋なども、姿勢の乱れや呼吸の浅さから緊張しやすく、耳や顎まわりに影響を及ぼします。

これらの筋肉をしっかり緩めることで、頭部全体の筋バランスが整い、不調の再発予防にもつながります。

自律神経を整えるツボへの全身的アプローチ
内関のツボの場所

耳の痛みや違和感には、自律神経の乱れがかかわっている場合も多くみられます。

そこで、当院では頭・手足・背中などにある自律神経の調整に効果的なツボにも鍼灸施術を行い、身体全体のバランスを整えていきます。

これにより、心身ともに深くリラックスし、「かみしめ」の根本にある緊張の軽減も期待できます。

耳の不調やかみしめに効果的なツボ

鍼灸では、“不調の出ている場所”だけでなく、“不調を引き起こしている背景”にも目を向けて施術を行います。

当院では以下のようなツボを中心にアプローチしています。

▶️【顎関節や咬筋の緊張をゆるめるツボ】

下関のツボの位置

  • 下関(げかん):頬骨の下で、咬筋の緊張が強い方に効果的。口を開けるとへこむところにあり、顎まわりの血流促進にも使います。
  • 頬車(きょうしゃ):エラの角あたりにあるツボで、咀嚼筋のこわばりや顎のだるさ、歯ぎしりにも。
  • 翳風(えいふう):耳の後ろのくぼみにあるツボで、顎関節症や耳の閉塞感に用いるポイントです。

▶️【首〜肩の緊張・姿勢の崩れに対応するツボ】

  • 天柱(てんちゅう)・風池(ふうち):後頭部と首の境目にあるツボで、首コリや頭の重だるさ、自律神経の乱れにもアプローチできます。
  • 肩井(けんせい):肩のいちばん盛り上がった部分にあり、肩の緊張をほぐして上半身全体の巡りを良くします。
  • 天容(てんよう):胸鎖乳突筋の途中にあり、顎・首・耳の状態によって使います。

▶️【自律神経を整えて全身の緊張をゆるめるツボ】

  • 百会(ひゃくえ):頭頂にある万能のツボで、気のめぐりを整え、リラックスを促進します。
  • 神門(しんもん):手首の内側、小指寄りにあるツボで、緊張や不安を和らげて安眠にも効果的。
  • 太衝(たいしょう):足の甲にあるツボで、ストレス由来の「怒り」やイライラなど、感情面の緊張にもアプローチできます。

「こんなところにも効くんですね」とよく驚かれるのですが、ツボの選び方は“症状の背景”に応じて変わります。お一人おひとりの呼吸や睡眠の質、緊張の種類などを丁寧に見極めながら施術を組み立てています。

「異常なし」でもつらいあなたへ—身体の声に耳をすませて

耳の奥の痛みや違和感は、決して“気のせい”ではありません。
レントゲンや血液検査で異常が見つからなくても、筋肉の緊張という見えない原因が潜んでいることがあります。

鍼灸治療では、単なる症状だけでなく、その背景にある「身体全体のバランス」に目を向けてアプローチすることができます。

「筋肉の声」を聞く視点が無意識のうちに蓄積された緊張をゆるめ、本来のリズムを取り戻すきっかけになるかもしれません。

耳の痛みや違和感・顎の痛みなどでお困りでしたら、ぜひご気軽にお問合せください。

ご予約のページへ
ブログ記事一覧へ